肩関節の疾患と治療法
肩の構造
関節鏡視下手術は、関節外の正常組織の侵襲を最小限に抑え、関節内の病変部位の診断や修復が可能な治療法です。切開して行う手術に比較して侵襲が少ない事から、術後の疼痛が軽く、早期退院、早期職場復帰、早期スポーツ復帰が可能になります。以下、代表的疾患とその治療方針および術式について紹介します。
反復性肩関節脱臼
スポーツ中の外傷や転倒で手をついた等を契機として肩関節の脱臼が起こり、それが癖になって軽微な外傷でも肩が外れるようになってしまった状態を言います。スポーツ活動中だけでなく、日常生活や寝がえりでも外れてしまうことがあります。
保存的治療
初めての脱臼の場合は、患部を安静にする事で、脱臼が癖にならずに改善する事があります。 一定の安静期間の後に、可動域訓練や筋力訓練を行います。 しかし、10代や20代の若年での初回脱臼の場合は高率に反復性肩関節脱臼になり、手術を要する事が多くなります。 反対に高齢での脱臼の場合は腱板断裂を伴う事が多くなり、腱板断裂の治療も必要になります。反復性肩関節脱臼を放置すると変形性肩関節症の原因になるため、活動性の高い時期に手術できちんと治す事をお勧めします。
手術的治療
腱板断裂と同様に、当院では関節鏡を用いた手術を中心に行います。
関節鏡視下手術は、手術創が目立たなく、正常な組織を損傷しないため、術後の可動域制限が少なくスポーツ復帰率も高くなりますが、アメフト、ラグビー、スノーボード等のコンタクトの激しいスポーツの場合は、切開での手術を選択する事もあります。
関節鏡で行う場合の手術方法は関節鏡視下バンカート法と呼ばれる手術で、正常な構造物を損傷せずに、壊れた関節包(関節の袋)や関節窩の骨を修復する方法です。
糸つきの小さなビスを関節窩に打ち込んで、その糸で靭帯や壊れた骨を関節窩に固定する方法です。さらに、関節内の病態や患者の年齢・性別・スポーツ種目によって補強術式を追加する事があります。入院期間は数日間で充分で、数週間程でデスクワークなら就労・就学可能です。ただし、術後は着脱可能で衣服の上から装着する装具で4週ほど患肢を固定します。
一般的に、術後1~2ヶ月で日常生活には不自由がなくなり、3ヶ月で軽いスポーツ、6ヶ月で概ねスポーツ復帰が可能となります。