膝前十字靭帯損傷(ACL損傷)
受傷機転・症状
膝前十字靭帯損傷はスポーツ時に膝を捻ることで受傷することが多く、受傷時には膝が外れたような感覚やボキッと音がしたと表現される方がいます。受傷すると強い痛みにより歩行や膝の曲げ伸ばしが困難になります。膝が腫れて血が膝関節の中に貯まることがあります。その後は徐々に疼痛は改善しますが、歩行時やスポーツ時に膝の不安定性を感じるようになります。
診断方法
徒手検査では膝を90度に曲げて脛の骨(脛骨)を前方に引っ張りどれだけ移動するか(前方引き出しテスト)、膝を少し曲げた状態で下腿を前方に引っ張り靭帯によって脛骨が止まるか(Lachmann test)などで診断がつくこともありますが、受傷直後は疼痛により脱力が上手くできないと分からないこともあります。
画像検査ではMRIを行うことにより損傷した膝前十字靭帯を確認することが出来ます。
治療
膝の前十字靭帯は損傷すると自然と修復される可能性は低く、そのままにしておくと膝の不安定性が残り、膝の中の半月板や関節軟骨などを損傷し、若年者でも変形性膝関節症になってしまいます。そのため、治療法としては関節鏡を用いて前十字靭帯再建術を行います。損傷した前十字靭帯を縫合することは難しいため、膝を曲げる筋肉(膝屈筋腱)である半腱様筋腱・薄筋腱や膝のお皿(膝蓋骨)の下にある膝蓋腱の一部を採取し、新しい靭帯を作り治し、金属のボタンを使用し骨に固定します。また、その際に半月板損傷もあれば、なるべく縫合します。
手術後は1週間は膝を伸ばしたまま固定し、手術後1週より膝の曲げ伸ばしの練習を開始します。足を着くのはDonjoy装具(硬性装具)という前十字靭帯損傷用の装具を装着し、手術後2〜3週より部分荷重を開始し、手術後4〜5週より体重荷重制限をなくす予定です。Donjoy装具が外れるのは手術後3ヶ月で、それ以降からDonjoy装具から軟性装具へ変更し、ランニングなどから運動を開始します。リハビリにより筋力や可動域の回復を確認しながら手術後6〜9ヶ月程度で競技復帰の予定です。
手術後1年で再建した前十字靭帯を確認するために関節鏡と脛側に入っている金属を取り除く骨内異物除去術を行います。