投球障害
概要
投球障害は繰り返される投球動作により肩や肘の痛みが生じ、投球困難になるスポーツ障害です。部位の違いから肩は投球障害肩、肘は投球障害肘と分類され、成長期では成長軟骨、成長期を過ぎた成人期以降では靱帯や筋肉がダメージを受け発症します。症状が進行すると肩では手が挙がらない、力が入らない、肘では靴下が履けない、第一ボタンをとめられないなど日常生活にも支障をきたすことがあります。具体的な疾患は以下の通りです。
成長期 | 成人期以降 | |
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投球障害肩 |
リトルリーガーズショルダー(上腕骨近位骨端線離開) |
関節内インピンジメント症候群
肩峰下インピンジメント症候群
腱板断裂
SLAP損傷
Bennett損傷
胸郭出口症候群
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投球障害肘 |
内側型野球肘(上腕骨内側上顆裂離骨折)
外側型野球肘(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)
後方型野球肘(肘頭疲労骨折)
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尺側側副靭帯損傷
紋扼性神経障害
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原因
一般的には投げすぎ(over use)、コンディショニング不良、投球フォーム不良が原因といわれています。
診断
- 問診(現病歴、既往歴、症状発現部位、症状発現時期、ポジション、スポーツ頻度など)
- 画像診断(レントゲン、超音波検査、CT、MRIなど)
- 整形外科的テスト
治療
基本的にはリハビリテーションを中心とした保存療法を行いますが、患部の状態や症状、競技レベルなどを考慮した上で手術となる場合もあります。
保存療法では、まず投球制限とコンディショニングの改善を行います。投球制限を行うことで症状が改善する場合もありますが、投球制限によって筋力や柔軟性などのコンディショニングが改善するわけではありませんので、コンディショニングが改善されないまま投球を再開すると再発するケースもあります。基本的に投球制限とコンディショニングを改善することで症状の改善はもちろん再発を防止することもできます。投球制限やコンディショニングを改善しても症状が改善しない場合は投球フォームの確認・指導に踏み切ります。
投球制限は、レントゲンなどの画像検査や理学所見をもとにノースローか否かを決定します。成長期の内側型野球肘(上腕骨外側上顆裂離骨折)や外側型野球肘(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)、リトルリーガーズショルダー(上腕骨近位骨端線離開)、成人の尺側側副靱帯損傷など構造的な問題が認められる場合は3~6週間のノースローを選択します。
コンディショニング改善は、投球に必要な上半身や体幹の筋力・柔軟性、下半身の柔軟性を評価し、個々に応じた自主運動を指導します。週に1回程度通院していただき、症状や自主運動の成果を確認し、必要に応じて自主運動の追加や変更をします。
投球フォーム確認・指導は、当院5階投球練習場で実際に投球している姿をカメラで撮影します。体重移動(並進運動)、肘下がり(肩-肩-肘ライン)、手投げ(内旋投げ)などを中心に確認し、不備がある箇所をバイオメカニクスにもとづいて修正していきます。状態確認や競技レベルに応じてラプソードを使用する場合もあります。
内側型野球肘(上腕骨内側上顆裂離骨折)や外側型野球肘(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)、腱板断裂は状態によっては手術となる場合があります。その際は、内側型野球肘は骨接合術・尺側側副靱帯再建術、外側型野球肘は関節鏡鼠摘出術・骨軟骨移植術、腱板断裂は腱板修復術を行います。